人民は弱し 官吏は強し(星新一/著) 

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

仕事関係の人が、
〜面白いから、ぜひ、読んでみてください。
と、この本を貸してくれました。
ショートショートで有名な著者には、珍しい長編小説なのですが、読んでみると、確かに、とても面白い小説でした。

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明治末、12年間の米国留学から帰った星一は製薬会社を興した。
日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の官僚たちの反感を買った。
陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害をうけ、会社はしだいに窮地に追いこまれる…。
最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。
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というお話です。

僕は、新しい日本を作ろうと、理想に燃えた明治の才能人が、日本の社会組織の中で、葬り去られて行く物語のように、読みました。
官吏は強し、ということですが、この本に描かれているのは、官僚やマスコミを自由に操り、法の正義さえも捻じ曲げてしまう、金(財閥)と結びついた国家権力の恐ろしさです。
それでも、個人の損得を超越して、あくまで理想と正義を追い続けて、この恐ろしい国家権力に立ち向かう主人公の姿は、とても、魅力的です。

最後の場面で、主人公が、
〜われわれが持っている現在の文明には、まだ大きな欠陥があるという教訓
を得たと、述べています。
この欠陥は、今の日本でも、まだまだ改良される余地がたくさんあるように、思いました。