井上ひさし「父と暮せば」

父と暮せば (新潮文庫)

父と暮せば (新潮文庫)

愛する者たちを原爆で失った美津江の元に、木下という恋人ができる。
しかし、自分一人だけ生き残った負い目から、
「うちはしあわせになっては、申し訳が立たんのですけえ」
と、その恋からも身を引こうとする。
そこへ、もはやこの世の人ではない父・竹造が、「恋の応援団長」として現れる。
娘を励ます父に、美津江の気持も徐々にほぐれていくのだが、いよいよという日に、
「うちはおとったんを地獄よりひどい火の海に置き去りにして逃げた娘じゃ」
と、逃げ出そうとする。
しかし、
「わしの分まで生きてちょんだいよォー」
という父の願いが、ついに底なしの絶望から娘をよみがえらせることに・・・。

原爆直後という極限の状況下に、生きるということを、明るく謳いあげた戯曲です。
外国語にも翻訳され、世界各地で上演されている感動の名作です。